ゼンイハイザーから「IE 40 PRO」の後継機にあたる「IE100 PRO」が発売されました。
IE 40 PROはミュージシャンや音楽クリエイターが使用するモニターイヤホンですが、実売価格1万円台前半で割と手頃に購入できることもあり、リスニング用として使用する人も多く、評価の高い人気商品でした。
IE 100 PROの特徴とスペック
IE 100 PRO はモニターイヤホン
モニターイヤホンとは、ステージ上や楽曲制作時に今どんな音が鳴っているのかを正確に把握するために使うイヤホンです。
傾向としてフラットな音質で、求められる性能としては「原音を忠実に再現してくれる」「いろいろな音を聴き分けられる」「遮音性が高い(余計な音が混じらない)」などがあります。
音楽のプロが現場で使うイヤホンを手頃な価格で体験できるのが「IE 100 PRO」です。
IE 100 PRO の特徴
- ダイナミックドライバーの歪みのないサウンド
- 上位モデルと共通のコネクター
- BT Connector を使ってBluetooth化
ダイナミックドライバーの歪みのないサウンド
イヤホンの音を発生させる装置をドライバーと言いますが、大きく3種類に分類できます。
- ▶ ダイナミック型
-
スピーカーやヘッドホンにも使われている仕組みで、広い音域と低音域を出すのが得意。
- ▶ BA(バランスアーマチュア)型
-
クリアな音質で中高音の細かい表現が得意な反面、低域は苦手で音域は狭い。
- ▶ ハイブリッド型
-
ダイナミック型とBA型を組み合わせたドライバー。性格の違うドライバー同士で調整が難しい。
モニターイヤホンでは、クリアな音質のBA型のドライバーを複数搭載する製品が多いですが、IE 100 PRO はダイナミックドライバーが1基で済むため周波数帯域を分割する必要がなく、低域から高域まで歪みのないバランスの取れた音を実現しています。
上位モデルと共通のコネクター
IE 100 PRO のコネクターは上位モデルと共通になりました。
共通化で良くなったこと
- 上位モデルとアクセサリー類が共有できる
- ケーブルが外れにくくなった
IE PRO シリーズのコネクターは独自規格ですが、その中でも IE 40 PROは別規格だったので、専用のアクセサリー類を用意する必要がありました。共通化によって、将来「IE 400 PRO」や「IE 500 PRO」を購入したとしても使い回しができます。
また、接点部分が太くなったことで、イヤホンとケーブルがしっかりと固定されるようになりました。実際、ケーブルの付け外しに IE 40 PRO より力がいるので、不用意に外れることは少ないと思います。
IE PRO BT Connector を使ってBluetooth化
IE 100 PRO のブルートゥース化は、ケーブルを外して「BT Connector」に繋ぎ替えるだけ!
IE PRO BT Connectorのいいところ
- 家ではワイヤード、出先ではブルートゥース
- 音声通話や音楽の操作ができるようになる
- 首掛け式で紛失のリスクが少ない
有線接続にもブルートゥース接続にもメリットがあります。例えば家でじっくり高音質で聴きたいときは有線で、出先で手軽に聴きたいときはブルートゥースといった具合に、状況に合わせて使い分けられます。
BT Connector はマイクを搭載しており、音楽の再生操作やスマホでのハンズフリー通話もできます。完全ワイヤレスイヤホンほど機能的ではありませんが、便利な付加機能です。
イヤホンをケーブルで繋いでブルートゥース化するので、首掛け式のワイヤレスイヤホンになります。完全ワイヤレスイヤホンと比べると開放感は劣りますが、紛失のリスクは減ります。個人的には首掛け式のワイヤレスイヤホンが気に入っています。
コネクターの共通化の恩恵と言えますが、上位モデルでも使えるのがいいですね!
IE 100 PRO のスペック
ドライバー | ダイナミック型 |
---|---|
周波数帯域 | 20~18kHz |
インピーダンス | 20Ω |
音圧感度 | 115dB |
接続プラグ | 3.5mmステレオミニプラグ |
ケーブル長 | 1.3m |
重量 | 約19g |
インピーダンスと音圧感度と音量の関係
インピーダンスはイヤホンの電気抵抗のことで、値が小さくなると電気が流れやすく一般的に再生音量は大きくなります。逆に抵抗が大きいと再生音量は小さくなります。
また、音圧感度は決められた電力でどれくらいの音圧を発生させられるかを示したもので、数値が大きい方が大きな音を出せます。
IE 100 PROはインピーダンスが低く音圧感度も高く設定されているので、スマホのような非力な出力の機器でも十分な音量で楽しめます。
IE 100 PROの外観と機能
イヤホン本体はプラスチック製で高級感はありませんが、音質を追求した機能的な美しさは、いかにもプロ仕様といった佇まい。
耳に触れる部分は角が丸められていて、パーツ同士の合わせ目もなめらかなので装着時の違和感は全く感じません。ダイナミックドライバー1基ということで、厚みが薄く非常にコンパクト。
装着はケーブルを耳の上に回すシュア掛けで、コンパクトな作りのおかげで耳への収まりがよく遮音性も高い。つけ心地はとにかく軽くて長時間使っても疲れません。
ケーブルは自由な形にできるワイヤー入りで、耳に沿わせて変形させると頭を振り回しても外れる気がしません。ワイヤー入りは好き嫌いが分かれますが、個人的にはしっかり固定されるので気に入ってます。
イヤホン本体の重量は片側で2.6gしかなく
イヤホン一式でも19.5gしかありません。ケーブル長は1.3Mで接続端子は3.5mmミニプラグ。
軸の直径は4.9mm。標準的なサイズなので社外品のイヤーピースが使えます。軸の先端はイヤーピースが外れにくいように返しがついていて、軸の中にはゴミの侵入を防ぐフィルターが入っています。
final 社製の TYPE E は普通に使えました。
内容物はイヤホン本体、マニュアル、イヤーピース、掃除道具とポーチです。ポーチの口はバネの力で閉まるようになっていて使い勝手がいいです。
イヤーピースはシリコンタイプの S M L サイズと、フォームタイプの Mサイズが付属します。
IE 100 PROの購入層は音に拘る人が多いと思うので、価格が上がったとしてもフォームタイプの Sサイズと Lサイズも同梱してほしいですね
軸はサイズ別に色分けされていて、パッと見て違いが分かるようになっています。写真では分かりにくいですが、軸の中にもフィルターが装着されています。
イヤホン側とイヤーピース側のWのフィルターでイヤホン内部を綺麗な状態に保ちます。
IE 100 PROの音質
IE 100 PRO の音質はクリアでメリハリがあって「元気な音」という印象です。
モニターイヤホンはフラットな音質を想像しますが、IE 100 PRO は低域も高域もしっかり出ています。低域は他の音域を邪魔しない丁度いい具合で、使い始めにギリギリ刺さらないくらいに感じていた高域も、50時間使用した現在では落ち着きました。
中域は、低域と高域に埋もれずに聴き取りやすく、ボーカルを近くに感じます。
全体のバランスが良くて、どんなジャンルの曲を聴いても印象は変わりませんでした。
音質はクリアですが硬い音ではないので、長時間聴き続けても疲れることはなく、リスニング用としても十分使えるイヤホンです
IE 40 PRO との比較
「IE 40 PRO」と「IE 100 PRO」を比較しました。
見た目がそっくりでスペックは全く同じ、メーカーサイトには「新開発のダイナミックドライバー」と書いてありますが、聴き比べても違いが分かりませんでした。
大きな変更点はコネクターです。
ケーブルを外して並べるとコネクター径の違いがよく分かります。IE 40 PRO はケーブルを引っ張ると結構簡単に外れますが、IE 100 PRO を同じ力で引っ張ってもびくともしません。
ケーブルは端子自体が太くなっていますが、付け根のゴムの部分も太くなって繋いだときの「シッカリ感」がアップしています。
IE 40 PRO では意図せずケーブルが外れてストレスに感じる人もいたようなので、コネクターの変更は有り難い改善です
SHURE SE215との比較
同価格帯のイヤモニで、定番商品の「SHURE SE215」と比較しました。
SE215 の音質は低中音寄りで高域は控え目です。高域が控え目なので耳に刺さりませんが、低域の強さが細かい音を聴き取りにくくして籠もって聴こえます。逆に中域は非常に聴き取りやすく、ボーカルは IE 100 PROよりも更に近くに感じました。
遮音性の高さで評価されている SE215ですが、音を鳴らさない状態で装着して、スピーカーから流れる音がどれくらい聴き取れるのかを試したところ「大して変わらない」というのが正直な感想です。
用途がリスニング用なら IE 100 PROのクリアでメリハリのある音質の方が気持ちいいです。
下の表は「SE215」と「IE 100 PRO」の印象をまとめたものです。
IE 100 PRO | SE215 | |
---|---|---|
解像度 | 高い | 低い |
低域 | 丁度いい | 強め |
中域 (ボーカル) | よく聴こえる、近い | すごくよく聴こえる、近い |
高域 | やや強め | 控え目 |
バランス | 良い | 低中音寄り |
音の印象 | クリア | もっさり |
SE215はモニターイヤホンとしてはいいのかもしれませんが、リスニング用としては IE 100 PRO の方が絶対にオススメです
IE PRO BT CONNECTOR を使ってブルートゥース化
2020年の暮にアジア先行で発売されていたようですが、丁度この記事をアップしてすぐに再販されているのを発見したので購入しました。
内容物はブルートゥースコネクター本体、USB-A to USB-Cケーブル、説明書、写真には写していませんが注意事項などが書かれた冊子が2冊。
早速イヤホンと繋いでみると、ケーブルがかなり短くなってスッキリしました。そして何より「カッコいい!!」
「プラスマイナスボタン」で音量調節、音量ボタンに挟まれているのは「電源ボタン兼ファンクションボタン」で電源のオンオフや音楽の再生停止、音声通話を操作します。一番右のボタンで音声アシスタントを呼び出せます。
充電はコントローラー側面のUSB-Cに繋いで開始、約1時間30分で満充電になります。充電中はLEDが赤色に点灯して、完了すると青色に変わります。駆動時間は最大約10時間。
IE PRO BT CONNECTOR のペアリング方法
ペアリングはめちゃくちゃ簡単です。
- スマホをブルートゥースが使える状態にする
- BTコネクターの電源を5秒長押し後「ペアリング」をタップ
たったこれだけで IE 100 PRO のブルートゥース化が完了します。音声通話を使用するには「連絡先と通話履歴へのアクセスを許可する」にチェックを入れます。ちなみにブルートゥース用の専用アプリはありません。
対応コーデック
ペアリング後確認すると高音質で低遅延が特徴の「aptX」で接続されていました。
- SBC
- AAC
- AptX™
- AptX™ Low Latency
IE PRO BT CONNECTOR の音質と使用感
気になる音質は、有線接続の状態から低音の迫力とキレを若干弱くした印象です。
聴くジャンルによっては物足りなく感じるかもしれませんが、思っていたより音質の低下が少なかったので満足しています。
ブルートゥース接続で気になるのは遅延ですが、「Youtube」と「Amazonプライムビデオ」を視聴したところ遅延は全く感じませんでした。接続も安定していて、隣の部屋に移動しても途切れなかったので、普通に使って不満に思うことはないでしょう。
音声通話はノイズキャンセリング機能がないので、過度な期待は禁物です。
リモコンが使いにくい
イヤホンを装着するとリモコンは首のあたりにきます。当然その状態ではボタンは見えないので、指で確認しながら操作することになります。慣れれば思い通りに操作できるようになるのかもしれませんが、今のところスマホで直接操作したほうが手っ取り早いです。
それなりに不満はあるものの、耳からズレないイヤホンでいい音をケーブルレスで聴けるのは最高です!
BT CONNECTOR の代わりに完全ワイヤレスイヤホンを買えばいいのかもしれませんが、パーツを付け替えて家ではワイヤード、外出時はワイヤレスのように1台2役で使えるところが男心をくすぐります。
バッテリーが劣化したらケーブルを交換すれば済むところも気に入りました
【まとめ】IE 100 PRO はリスニング目的で使っても楽しいイヤホン
IE 100 PRO はモニター用のイヤホンですが、メリハリのある音質はリスニング目的で使っても楽しいイヤホンでした。
もともとIE 40 PROで好評だった音質に加えて、ケーブルの変更で堅牢性が増し、使えるアクセサリーが増えた IE 100 PROは、さらに魅力的なイヤホンに進化しました。
最近のワイヤレスイヤホンのようにノイズキャンセルやアプリを使った便利な機能はありませんが、いい音で音楽を楽しみたいなら選んで間違いのないイヤホンです。価格以上の音を聴かせてくれます。
こんな人にオススメ
- いい音で音楽を楽しみたい人
- 便利な機能がなくてもいい人
- SHURE掛けが気にならない人
IE 100 PRO ワイヤレスコントローラー
IE 100 PRO をブルートゥース化できます。
IE 100 PRO ワイヤレスコントローラー セット
別々で買うよりお得なセット商品。